その翼は誰がために


 

 

 




どこか遠い世界にある小さな星、その海に浮かぶ大きな大陸。

そこには二種類の人間がいて、それぞれ背中に翼を持っていた。

白い鳥のような翼を持つ白翼族、黒い蝙蝠のような翼を持つ黒翼族。

この二つの種族は遥か昔からいつ終わるとも知れない戦争を続けていた。

この話は、異なる翼の間に芽生えた恋の物語。





黒い翼を羽ばたかせて、一人の少女が空を駆けていた。

「ああ、もうこんなに遅くなっちゃった!アイツに場所取られてるかもー!」

大声で独り言を言いながら、一直線にどこかを目指している。

一生懸命飛んでいる内に、大きな湖が見えてきた。

その湖のほとりに少女は降り立つ。

「一足遅かったね。」

その少女に向かって横手から声をかけた者がいた。

少女はキッとそちらを睨み付ける。

少女の視線の先には、大きな樹とその根元に腰掛けている少年がいた。

年の頃はようやく十代に差し掛かったばかりだろうか、新緑色の髪と目をした端正な顔立ちの少年である。

「やっぱり先に来てたわね!悔しいかもー!」

少女は全身で悔しさを表現している。

少女もまた、少年と同じくらいの年で、舞い散る木の葉の色をした髪と海のように青い瞳の可愛らしい顔立ちをしている。

黒いワンピースの裾をはためかせ、少女は白い服を着た少年に近づく。

「ね、ちょっとの間でいいから、この場所譲りなさいよ。」

「嫌だね。この場所はぼくも気に入っているんだ。」

「うー、ケチー!」

「何とでも。」

少女の言葉を軽く受け流し、少年は皮肉げな笑みを浮かべる。

「白翼族って情に薄いのね。」

「黒翼族は先にその場所に来ていた人がいても、お構いなしで自分の物にするほど欲が深いのかい?」

白翼族と呼ばれた少年は、その笑みと全く同じ皮肉で少女の嫌味を退ける。

少女の言葉通り、少年の背には大きな白い翼が生えていた。

「いいわよ、勝手に座るから!」

少女は少年の隣に腰を下ろす。

「まったく君という人は……美しくないね。」

少年は呆れたように声を漏らす。

これもまた、この湖では珍しくない光景だ。





少女は湖のほとりに生えている大きな樹が好きだった。

この樹の傍に腰掛けて、湖を渡る風を感じるのが好きだった。

翼をいっぱいに広げて風を受けていると、飛んでもいないのに本当に飛んでいるような気分になる。

だから、少女は小さい頃から毎日のように樹の傍に一人で座っていた。

それがいつからだろうか、一人ではなく二人になったのは。

ある時、幼かった少女がいつものように樹の傍に降り立つと、自分のお気に入りの場所に一人の少年が座っていた。

その少年は自分とは違う翼を持っていた。

白翼族は恐ろしい敵だ――そう言われて育てられた少女は、少年の姿を見て立ちすくんだ。

それでも少女はその樹に近づいていった。

どれほど少年が怖くても、その場所は少女にとって譲れないものだったから。

「ここはわたしの場所なの!どきなさいよ!」

震えを抑え、少女は少年に向かって大声を出す。

「この場所が君のもの?そんなわけないだろう。ここは中立地だ。」

中立地とは、白翼族と黒翼族がお互い争わないと決めた地を指す。

主に水源など、両種族にとって大切なものがある場所がそう決められる。

「それでもここはわたしの場所なの!返しなさいよ!」

少女は少年の言葉に怯みながらも声を出す。

少年は人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべた。

「君は人の話もまともに聞けないのかい?……全く美しくない。」

「な、何ですって!?」

少女は恐怖も忘れ、少年に駆け寄る。

そのまま少年に詰め寄った。

「わたしのどこが美しくないのよ!?」

「そういう騒がしいところだよ。静かにしてくれないか。風の音が聞こえない。」

少女は少年の言葉に驚いた。

この少年は風の音を聞いていると言った。

自分と同じ、湖を渡る風が好きなのだ。

――あんまり悪い人じゃないのかも。

そう思った少女は少年の隣にぺたんと座る。

「……ぼくが怖くないのかい?」

少年は湖を見据えたまま、少女に問いかける。

少女は少年に笑いかけた。

「白い翼を持っているけど、わたしと同じものが好きだから大丈夫かなって。」

「……黒翼族は単純なんだね。」

「何ですって!?」

少女は少年の言葉に再びいきり立った。





それから数年、二人は毎日のように湖の傍で会っていた。

お互い名前も知らないのに、お気に入りの場所を巡って、どちらが早く来るかを競っている。

どちらが先に来ても、こんな風に二人で座るのだけれど。

この奇妙な関係を少女は気に入っていた。

「今日も負けちゃったわね。あなた、来るのが早いかも。」

「君が最近は来るのが遅いのさ。前はもっと早い時間に来てただろう?」

「そうなんだけど……勉強がね。」

「勉強?黒翼族の学校がどうなっているか知らないけど、居残りでもさせられてるのかい?」

少年の嫌味に少女は強く言い返す。

「違うわよ!……宿題が増えたから、終わるまで出かけられないの。」

――わたしは学校なんて行かせてもらえないもの。

少女の呟きは風に散らされ、少年の耳には届かなかった。

「……ちょっと疲れちゃったかも。」

少女は寝転んで、少年の膝に頭を乗せる。

「重いんだけど。」

「いいじゃない、ちょっとだけ。ちょっとだけだから…。」

少女はすぐに寝息を立て始める。

「まったく……。」

少年は一つ息をつき、少女の髪を撫でた。





二人は湖を眺めながら、毎日色々なことを話している。

主に少女がしゃべり、少年が聞き役に回る。

その日も少女が朝食に自分の好物が出たことを嬉しそうに話していた。

その何と言うことも無い話を少年も楽しそうに聞いていたが、少女はふと話を途切れさせ、少年を見つめた。

「どうしたんだい?」

今まで笑いながら話していた少女の真剣な表情。

少女はその問いに答えず、じっと少年を見つめている。

少年はその表情に自身の鼓動が高まるのを感じた。

「……あなた、翼が大きいのね。」

ようやく口を開いた少女は少年――ではなく、その翼を見つめたままそう言った。

「翼?」

少年はたたんでいた翼を広げる。

少年の体よりも遥かに大きな白が少女の視界を覆った。

「白翼族は、翼の大きさで強さが決まるって聞いたことがあるの。翼が大きければ大きいほど強くて偉いんだって。」

少女は少年の真っ白な翼に触れた。

「……あなたは何者なの?」

「それを言うなら、君こそ何者だい?」

少女の問いに、少年は問いで返した。

少女の黒い翼に生えている大きな鉤爪に手を伸ばす。

「君の翼はぼくより小さい。でも、それは黒翼族では大した問題ではないだろう?」

少年の指が長く鋭い鉤爪を辿る。

「黒翼族のステータスはこの鉤爪。これが長いほど速く飛べ、これが鋭いほど強い。これだけ見事な鉤爪を持つ黒翼族は滅多にいないだろう。」

でも――。

「翼の大きさも鉤爪の鋭さも親から受け継ぐもの。ぼく達には関係ないだろう?」

「……そうね。」

少女は白い翼に頬を寄せる。

少年は翼で少女を包み込みながら考える。

親から受け継いだからこそ、ぼく達に関係があるのかもしれないけど。

でも、今はただ君の傍に。

少年は黒い鉤爪を優しく撫でた。





「……戦争が酷くなってるって。」

少女がすぐ隣に座る少年の顔を見ないようにしながら言う。

「そうみたいだね。」

少年も硬い表情のまま答えた。

いくら仲が良くても、やはり二人は違う翼を持っている。

自分達の国の行く末を案じ、悩んでいた。

それでも――。

「どうしてみんな戦争なんてするの?」

少女は少年の手を握る。

「あなたは白い翼を持っているけど、こんなに優しいのに。」

少年はその手を握り返す。

「……ぼくも君に会う前まで、黒翼族は怖いものだと思っていた。」

だから――。

「お互い怖がってるんだよ。だから、力で恐怖をねじ伏せようとしている。」

少年の言葉に少女は首を振る。

「分からないよ、そんなの……。黒翼族と白翼族は元々一つじゃなかったの?」

「君がどうしてそれを――!」

少女の口にした事実に少年は思わず立ち上がる。

その知識は絶対の禁忌、知ることが出来る者はごく限られているはず――。

「数年前、あなたに出会った後、白翼族のことがもっと知りたくなって、図書館の禁書の部屋に忍び込んだの。そこにあった古い本に……。」

「書かれていたのか……。」

少年は再び少女の隣に腰を下ろす。

一度ほどかれた手を握り、少女は激しい口調で少年に問いただした。

「ねえ!あなたも知ってるんでしょう!?だって、さっきそう言ったもの!だったら何故…!」

少女の言葉は続かなかった。

ただ悲しげに顔を歪め俯く。

少年は顔を伏せた少女に静かに話し始めた。

「……ぼくも君と同じ。ぼくも禁書を盗み見た。」

少年は本の内容を思い出す。

「大昔、異なる翼の民は一緒に暮らしていた。ところがある日、ある二人の間で諍いが起こった。その二人がたまたま白と黒の翼を持っていた。」

少年は静かに悲しく続ける。

「違う翼を持った者の争いは、大きく広がっていった。白は白に、黒は黒に味方し、あちこちで争いが起きた。」

少女の小さな肩が震えている。

「とうとう白と黒は完全に分裂してしまった。お互い別の国を作り、戦争を仕掛け合うようになった。」

少年は少女の肩に手を置いた。

わずかに出た少女の肩は冷たかった。

「もう誰も戦争の理由なんて覚えていない。ただ、積もり積もった恐怖と憎しみで戦い続けているだけだ。こうなってしまっては――。」

「わたし達にはどうすることもできない……。」

少女は少年の熱い手を感じながら震え続けた。





両軍がぶつかり合う大規模な戦闘は、黒翼族の大勝利で幕を閉じた。

少女は浮かれていた。

長く戦争に行っていた父が帰ってくるのだ。

その喜びを早く伝えたくて、少女は少年をずっと待っていた。

しかし、少年はなかなか姿を現さない。

夕日が湖を赤く染める頃、少女が諦めて帰ろうとした時、やっと少年は湖にやって来た。

少女は少年に駆け寄ったが、少年の様子がおかしい。

苦しげに眉を寄せ、俯いている。

「どうしたの……?」

少女は恐る恐る問いかけた。

ずっと優しかった少年が、今にも壊れてしまいそうな弱さを見せていたから。

「父さんが……。」

しばらく無言だった少年がようやく口を開いた。

「父さんが大怪我をして帰ってきた……。助かるかどうか分からない……。」

少女はざっと青ざめた。

忘れていた。

黒翼族が勝ったということは、白翼族が負けたということなのだ。

負けたということは、勝った方にそれだけの傷を負わされたということなのだ。

それを忘れて自分は――。

「ごめんなさい……。」

少女は涙を零していた。

浮かれていた。

父にやっと会えると思って。

少年の父は死にかけて帰ってきたというのに。

「ごめんなさい……ごめんなさい……。」

少年の父にそんな怪我を負わせたのは、自分と同じ翼を持った人達なのに。

自分はそんな簡単なことにも思い当たらず喜んでいた。

「ごめんなさい……。」

少女の涙を拭う手があった。

「どうして君が謝るんだい……?」

少年はさっきよりももっと苦しそうな顔をしていた。

少年にそんな顔をさせているのは自分だと悟って、少女はさらに涙を零す。

「泣かないでくれ……。」

少年は少女の頭を抱き寄せた。

少女は少年の肩に顔をうずめ、涙を流し続ける。

少年は少女を抱きしめ続けた。





少女は空を駆けていた。

鉤爪で空を切り裂き、翼で風を打って進む。

湖に辿り着いた時、少女は息を切らしていた。

「どうしたんだい、そんなに急いで……。」

少年が立ち上がり、近づいてくる。

少女は少年の顔を見るなり、抱きついて泣き出した。

少年は先日の少女を思い出して慌てる。

「ど、どうしたんだ?」

少女は答えず、ひたすら泣き続ける。

少年は少女が泣き止むまで、ずっと頭を撫でていた。





少女が落ち着いてきた頃を見計らい、少年は樹の影に少女を座らせた。

「何があったんだい?」

少年が優しく尋ねる。

少女はしばらくためらっていたが、ようやく口を開いた。

「……もうこの湖には行っちゃいけないって……。」

「どうして……。」

少年は衝撃を受けた。

少女がこの湖に来なくなる。

それは少女にもう会えなくなるということだから。

「……黒翼族が……白翼族を今度こそ滅ぼすって。そのために、この湖を占領するって……。」

少年は少女の伝えた事実に驚愕した。

それは――。

「白翼族も巻き返しのために、この湖を占拠しようとしている。この湖を押さえれば、黒翼族の都は干上がるから。」

中立地など関係ない。

互いが互いを滅ぼそうとする地獄そのものだった。

少女は少年の手に再び涙を零す。

「……パパが……もうわたしを外に出さないようにするって…。」

「君の父……センリ王がかい?」

「どうしてそのことを――!?」

少女は立ち上がり、少年から離れようとした。

少年は少女の手を掴み、体勢を崩した少女を自分に引き寄せる。

「前々からそうじゃないかと思っていた。黒翼族の第一王女、ハルカ。」

少女――ハルカはうなだれる。

この少年だけには知られたくなかった。

自分が白翼族を滅ぼそうとしている旗頭の娘だということを。

「黒翼族の王女はぼくの国でも有名だから。王女の特徴や性格を伝え聞く内に、君じゃないかと思うようになった。」

少年はハルカを抱きしめながら言う。

「だったら……あなたは何者なの……?」

ハルカは震える声で、いつかの答えてもらえなかった質問を口にした。

「……ぼくの名はシュウ。」

少年の名前にハルカは驚く。

その名は何度も耳にした。

自分の家――王宮のあちこちで。

「あなたが白翼族の王子……?」

王宮で囁かれていた噂――大怪我を負った白翼族の王はもう戦争に出られない。

軍を率いるのは、彼の一人息子で若年ながらも文武に名高い――。

「あなたが……戦争に行くの……?」

少年――シュウの服を強く掴みながらハルカは呆然と言う。

だって、それは――。

「わたしのパパが……あなたと殺し合うの……?」

ハルカは信じられないというように頭を振る。

「そんなの……いや……。」

シュウは苦しそうにハルカを見やる。

「ハルカ……。」

シュウは再びハルカを強く抱きしめた。

ハルカの顔が見えないように。

「ハルカ、決めるんだ。自分がどうするのかを。」

ハルカを見なくてすむように。

「もうこの湖に来ないと決めるかい?」

ハルカはその言葉に震え上がる。

「や……あなたに……シュウに会えなくなるなんていや!」

ハルカは強くシュウに抱きつく。

シュウは震えるハルカの髪を撫でた。

「それならハルカ、ぼくと一緒においで。」

シュウの言葉に疑問を覚え、顔を上げようとしたハルカを、シュウは強く抱きしめることで抑える。

「父さんが怪我をしてしまった以上、ぼくが白翼族を率いるしかない。ぼくは国を捨てられない。」

何より――。

「ぼくが君とどこか遠くへ逃げたところで、戦争は無くならない。」

だから、とシュウは続ける。

「ぼくと一緒に白翼族の国に行こう。君がぼくの国にいる限り、黒翼族は手が出せなくなる。戦争は無くなるんだ。」

ハルカはシュウの言葉を黙って聞いている。

「君はぼくが守るから。ずっとずっと守るから。だから、ぼくと一緒に来て、ぼくと一緒に暮らそう。」

シュウはハルカを抱きしめる腕に力を込める。

ハルカはずっと口を開かなかったが――。

「それじゃダメよ、シュウ……。」

ハルカはシュウの体をゆっくりと押し返した。

「そんなので戦争は無くならない。憎しみが強まるだけ。」

ハルカは涙で潤んだ瞳でシュウを見つめた。

「……だったら、どうすればいいんだ?」

シュウは鋭く光る目でハルカを見つめ返す。

「考えよう、シュウ。一人じゃ出来なくても、二人でだったら出来ることがあるよ。」

ハルカは一度離したシュウの手を再び取る。

「シュウがわたしのこと守るって言ってくれて本当に嬉しかった。だから、わたしもシュウを守る。シュウを死なせない。」

ハルカはシュウの手を自分の頬に当てる。

「シュウ、どこかにきっとあるよ。黒と白は一つだった。だから、もう一度一つになれる。」

ハルカはシュウの鋭い目を優しく見つめた。

「とめよう、シュウ。この場所はわたし達にとって大切な場所。ここを戦場にしたくないの。」

「……ここが戦場にならなくたって、他の場所が戦場になるだけだ。」

ハルカは首を横に振る。

「それも全部とめるの。お互いの国に帰って、皆を説得する。わたし達にはそれが出来る。」

そうしていつか――。

「平和になったら、またこの場所で会おう。きっと来るよ、その日が。」

ハルカは希望という名の笑みを浮かべた。

ハルカの笑顔に、シュウの頬も緩む。

「……それはまた遠大な夢だね。」

「でも、叶え甲斐のある夢でしょう?」

「そうだね。」

シュウはハルカの頬に添えた手に力を込める。

「ぼく達はここで別れよう。」

「でも、再び会える日が必ず来る。その日まであなたを――。」

「君を――。」

愛し続ける。

その誓いは二人の口付けに飲み込まれた。





 

 

 







それから七年。

永きに渡る戦争に終止符が打たれた。

今日、和平が結ばれる。

しかし、調印の場には、終戦の最大の功労者たる白翼族の王子と黒翼族の王女の姿は無かった。





美しい女性に成長した少女が降り立つ。

湖のほとりに生えた大きな樹は七年前と全く変わっていなかった。

その樹の下に腰掛ける少年も。

ただ、その少年も少女と同じく、七年の間に成長していた。

「ハルカ……。」

少年が立ち上がった。

「シュウ……。」

少女は、自分よりも背の高くなった少年を見つめる。

互いに走り寄り、手を伸ばして抱き合った。

「シュウ……シュウ!」

「会いたかったよ、ハルカ……。」

互いの名を呼び、二人は固く抱き締め合う。

「やっと平和になった。よく頑張ったね、ハルカ。」

「シュウだって!皆を説得するの、大変だったでしょう?」

少しだけ体を離し、二人で微笑み合う。

「ちゃんと誓いを守ってくれた?」

「もちろんよ!シュウの方こそ浮気しなかった?」

「そんなことしないよ。君を一日でも忘れたことは無かった。」

「わたしだって!」

シュウは七年前のように、ハルカの頬に手を添える。

「あの時の誓いは、今日この日まで互いを愛し続けるというものだった。その誓いは達せられた。」

そうしてその手に力を込める。

「だから、新しい誓いを立てよう、ハルカ。ぼくはずっと君を――。」

「シュウ、ずっとあなたを――。」





湖を渡る風は、新たな誓いを立てる二人を祝福するように優しく吹いていた。

 

 

 

 

 

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