棘の存在意義

 

 

 

 

 

 

「ハルカ、何か申し開きは?」

放課後の保健室、白いベッドにハルカは押さえつけられていた。

シュウを真っ直ぐ見ることができない。

「ふ、不可抗力かも……。」

目を逸らしながらハルカは言う。

こんな言い訳にもならない言い訳をシュウは聞いてくれないんだろうなと思いながら。

「どこが不可抗力なんだ?」

シュウの声はひたすら冷たい。

前にもこんな会話をしたことがある。

その時もシュウはハルカの言い訳を一切聞かず、ハルカを無理やり抱いた。

しかし、前回と今回では明らかに違う点がある。

今回はハルカに非があるのだ。





「あれ?何か入ってる。……手紙?」

ハルカは登校して靴箱を開けた時、手紙が一通入っているのを見つけた。

教室の自分の席について開けてみる。

「ええと、放課後、体育館裏に来てください、か。差出人は書いてない……。」

「絶対にダメだ。」

ハルカは勢いよく振り返る。

いつの間にか、シュウが後ろに立っていて、手紙を覗き込んでいた。

「シ、シュウ……。」

「ハルカ、絶対に行ってはいけない。」

シュウが眼光を鋭くする。

「な、何で……?」

「このパターンは告白関係だろう。君にはもうぼくがいるじゃないか。無視していればいい。」

どこか怒っているようなシュウに、ハルカは落ち着かない。

「で、でも!断るなら、相手がちゃんと納得できるような答えを伝えるのが筋じゃない?」

「そうやってノコノコ出かけていって、この間みたく知らない男に抱きしめられるわけだ。」

ここでハルカは思い当たった。

シュウは嫉妬してるんだ。

「大丈夫よ、シュウ。あんなのは例外よ。みんな、ちゃんと伝えれば納得してくれるわ。」

「ハルカ、君は危険意識が足りない。」

シュウはハルカの腕を掴む。

「危険なんだ、好きという感情をぶつけて、相手に受け入れられなかった人間は。君はそれを理解していない。」

シュウは真剣にハルカの身を心配していた。

それはハルカの腕を掴む強さにも表れている。

しかし、ハルカはそれをただの嫉妬だと受け取ってしまっていた。

「大丈夫よ、シュウ。」

ハルカは繰り返す。

「ちゃんと断るから。わたしにはシュウがいるから。」

ハルカはシュウの手を外して微笑んだ。





「……で、その結果がこれというわけだ。」

シュウはハルカの首筋に触れる。

そこにはくっきりとキスマークが残っていた。





少し目を放した隙に、ハルカは呼び出された場所に行ってしまっていた。

急いでシュウが駆けつけた先にあったものは、今思い出しても怒りの込み上げてくる光景だった。

ハルカは体育館の壁に押し付けられていた。

相手の手がハルカの胸元にかかっているのを見て、シュウは頭がすっと冷えていくのを感じた。

相手を殴りつけ、ハルカを自分の背後に庇う。

相手はこちらの顔を見るなり、怯えた表情を浮かべた。

「失せろ。」

シュウの静かな言葉に、相手は後ろも見ずに逃げ出した。

シュウは後ろを振り返る。

ハルカは小さく震えていた。

シュウはそんなハルカに構うことなく、無理やり腕を掴んで保健室までやってきた。

そうして、ハルカをベッドに組み敷いたというわけである。





「何度も忠告したよね?君はそれを無視して行ってしまった。」

「……。」

「君はぼくの心配を踏みにじったんだ。」

ハルカは顔を背け、目を合わせようとしない。

そうやって顔を背けていると、首筋の赤いアザがどうしても目に入る。

シュウは同じ所に唇を落とし、強く吸い上げた。

「っ!」

唇を離し、先程よりも若干大きくなったキスマークを眺める。

「君が他の男に所有印を付けられるなんて……。」

今度は顔を無理やり上に向かせ、唇を落とした。

逃げようとするハルカの舌を追いつめ絡ませる。

ハルカの体から力が抜けるまで、シュウはハルカの口内を蹂躙し続けた。

グッタリとしているハルカを見て、妙に冷めた頭がさらに冷めていく。

「刻んであげよう、ハルカ。」

ブラウスのボタンを外しながら言う。

「好きという感情をぶつけて、相手に受け入れられなかった人間が何をするか。」

ブラウスをはだけ、下着に手を掛ける。

「愛しているから心配していたのに、それを無下にされたぼくがどういう気持ちでいるか。」

シュウは顕わになったハルカの胸に触れる。

「君の体に。」





「つうっ!」

シュウが胸の頂に歯を立てると、ハルカが声を上げた。

「痛い?」

顔を上げてシュウは尋ねる。

ハルカは涙目で頷いた。

「ごめんなさい、シュウ……。謝るからやめて……。」

「そんな言葉が出るなんて、君はまだぼくの言いたいことが分からないみたいだね。」

シュウは噛み付いた胸の頂を強く摘んだ。

「やっ!」

「大人しく反省していれば、ぼくが許すとでも思った?言ったよね、君の体に刻み込むって。」

そのまま指で弄る。

「ただ犯すだけじゃすまないよ、ハルカ。」





シュウが幾度目かも分からないキスを落とす。

胸に赤い薔薇が散る度、ハルカは小さく声を上げた。

シュウは胸から顔を離し、ハルカの目を覗き込む。

その目は涙を流し、こちらを見つめ返していた。

「ねえ、ハルカ。どうして抵抗しないの?」

ハルカの涙は諦めの色をしていた。

「ぼくと彼らの違いは、君に愛されているか否か。」

シュウはその涙を舌で掬う。

「愛しているから犯されても抵抗しないなんて、そんなことは期待していないよ。ぼくが望むのは、君の体と心に刻むこと。」

優しい舌の動きとは裏腹に、シュウの目はずっと冷たいままだった。

「もう君がぼく以外の愛を受け取らないように、君に恐怖をあげよう。ぼく以外に犯される恐怖を。」

シュウはハルカの左手を取って口付けた。





シュウはハルカの蕾をなぞる。

蜜が滴るほどに、そこは濡れていた。

「これならもう大丈夫かな。」

シュウはハルカを抱き起こした。

「何……?」

ハルカが覇気の無い声で言う。

「君にはこれから抵抗してもらうよ。啼いて、泣き叫んで、喉がかれる程に。」

シュウは手に取ったままだったハルカの左手を秘部に導く。

蕾をなぞらせると、ハルカの体がビクリと揺れた。

「何をするの……?」

「こうするのさ。」

シュウはハルカの指を掴んで蕾に挿れた。

「やっ!」

「ほら、もっと奥に。」

シュウは指を抜こうとするハルカの手を押さえつける。

そのまま力を込めて、奥に進ませた。

「やっ、やだ!シュウ、やめて!」

「断る。」

指の付け根まで挿れさせる。

「指を動かして、ハルカ。」

ハルカはいやいやと首を振って、何もしない。

シュウは掴んだハルカの左手を動かした。

連動して、中に挿れた指も動く。

「あっ、やっ、やめて、シュウ!」

「やっぱり、君は自分の中がどうなってるか知らなかったんだね。」

シュウは途端に反応し出したハルカを見る。

「でも、それでいい。君の中に入ることが出来るのはぼくだけ。」

シュウは無理やり二本目を挿れさせる。

「ああっ!」

「本来なら、ぼく以外にイカされる君なんて考えられないんだけど、今回は特別。君には自分を犯してもらうよ。」

シュウはハルカの左手を激しく動かす。

「やっ……はっ……ああっ!」

ハルカは涙を流しながら、何とかその手を払いのけようとする。

シュウはもう一方の手で、ハルカの右手を掴んだ。

「左手だけで抵抗してごらん。抵抗すればするほど、君は自分を味わうことになる。」

事実、左手に力を込めようとすると、指が動いてしまう。

動いた指は、蕾の内壁を擦り、さらにハルカを煽った。

「い、いやっ……やめて、お願い……っ!」

「刻み込むんだ、ハルカ。これが君の招きかけた結果だ。君はぼく以外の男に犯されるところだったんだよ。」

シュウは三本目を挿れさせる。

既に蜜は溢れ、ハルカの指を伝い、シュウの手も濡らしていた。

激しい水音が響く。

それにかぶり、ハルカの泣き声と喘ぎが部屋にこだました。

ハルカの指の先端が、内壁の敏感な部分を突く。

ハルカが仰け反ったのを、シュウは見逃さなかった。

指がそこだけを突くように手を上手く動かす。

「いやあっ!」

ひときわ強く突かれ、ハルカは果てた。





指を挿れたまま気絶しているハルカを見て、シュウは笑みを浮かべる。

蕾からハルカの手を引き抜いて、その手を自分の口元に持っていった。

ペロリと甘い蜜を舐め取る。

「これがぼくの愛を無下にした罰だよ、ハルカ。」

そのまま、ハルカの指を舐め続ける。

「次は、ぼくへの償いだ。壊れるくらい優しく犯してあげるよ。」

シュウはハルカが目覚めるのを蜜を味わいながら待った。





茨の棘は蝶を逃がさぬために存在する。

しかし、外は棘よりも痛いものがあるのだ。

茨はそれを分かっているから、蝶が外に出ぬよう、棘で蝶を傷つける。

自分に縛り付けておけば、蝶はこれ以上傷つかなくていい。

棘は蝶に食い込み、蝶はもう逃げられない。

棘で傷つけるのは茨の愛情。

 

 

 

 

 

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