スピード
「ねえ、サトシ。」
「何だ、カスミ?」
「目にも留まらぬ速さってああいうのを言うのね。」
「ああ、そうだな。」
二人の視線の先には机を挟んで睨み合うシュウとハルカの姿。
そして、その机に恐ろしい速さで叩きつけられるトランプを持った手と手。
「あんなに燃えてるシュウって初めて見るよ、オレ。」
「ハルカがトランプで真剣なのはいつもの事だけど、あれはいつにも増して凄いわね。」
「ライバルっていいよな。」
「サトシ、ずれてない?」
「どこがだ?」
「……まあいいけど。」
「お、決着がついたみたいだぜ。」
「今回はハルカが勝ったみたい。教室で万歳三唱なんて恥ずかしい真似よく出来るわね。」
「シュウは結構悔しそうだな。」
「まあ、スピードって体力と頭脳と運が物を言うから。」
「それに負けたってことは実力で負けてるってことになるな。」
「そうね……ってまたするの!?」
「これで10戦目だぜ。」
「よく飽きないわね……。」
「やっぱり、ハルカもシュウもライバルと二人っきりの世界で勝負したいんだな!」
「使いどころが激しく間違ってる気がしないでもないけど、二人っきりの世界っていうのは当たりね。」
サトシとカスミの視線の先には、お互いしか見えていないライバル兼恋人同士の姿。