その両腕は茨のように

 

 

 

 

 

 

 

本人は全く自覚していないが、ハルカはかなりモテる。

ハルカちゃんファンクラブまであるらしい。

男子生徒ナンバー1のシュウほどではないが、その規模はかなりのものだとか。

明るい性格、コロコロ変わる表情、運動が得意で抜群のプロポーション。

これでモテない方がおかしい。

そんなハルカは――放課後の体育館裏で告白されていた。





「ハルカさん!ずっと前から好きでした!おれと付き合ってください!」

「え、えと……。」

ハルカは困惑する。

こんな風に告白を受けたことなんてほとんど無いのだ。

「あ、あの、ごめんなさい。好きって言ってくれて嬉しいけど、あなたとは付き合えない。」

その言葉に、目の前の男子生徒は失望の表情を浮かべる。

「……誰か好きな人がいるんですか?」

「……うん。」

「それだったら仕方ないですね。」

男子生徒は悲しそうな、それでいてどこか晴れ晴れした笑みを浮かべる。

「ハルカさんが他の男を好きでも、おれはハルカさんが好きでした。それを忘れないでください。」

「あ、ありがとう……。」

「でも、最後だけ――。」

最後まで言わず、その男子はハルカの腕を引っ張り抱き締めた。

「え!?ちょっと!」

「ごめんなさい。これだけは――。」

しばらくハルカを抱き締めると、その男子生徒は手を離した。

「……今のは忘れていいですよ。」

「簡単には忘れられないかも……。」

ハルカは赤面して言う。

「おれの告白に真剣に返事をしてくれてありがとう。」

それを最後に、その男子生徒は背を向けて走り去っていった。





「び、びっくりしたかも……。」

ハルカは胸に手を当てて言う。

知らない男子生徒に抱き締められて、まだ胸がドキドキしている。

「本当に驚いたよ。」

静かな声がハルカの後ろでする。

誰もいないと思っていたハルカは驚いて振り返った。

「シュウ!?」

シュウは壁に寄りかかって腕組みをしていた。

「いつからいたの?」

「途中からかな。もちろん、こんな目立つ場所にいたわけじゃないけどね。」

シュウは身を起こしてハルカに近づいてくる。

「ハルカ、少し付き合ってもらいたいんだけど。」

「え……、うん、いいよ。」

シュウはハルカの手を取って歩き出した。





「ここ……保健室じゃない。シュウ、どこか怪我したの?」

シュウがハルカを連れてきたのは保健室だった。

放課後なので、養護の先生も帰ってしまっている。

「いや、怪我なんてどこにもないよ。」

シュウは扉の内側から錠を下ろした。

「え、何で鍵なんて掛けるの?」

「どうしてだろうね。」

シュウはハルカの横を通り過ぎ、カーテンを引いた。

夕日がカーテンに遮られ、部屋の中は薄暗くなった。

カーテンから手を離して、シュウはゆっくりとハルカに近づく。

ハルカは初めて何かがおかしいと気付いた。

「どうしちゃったの、シュウ?」

「それはこっちの台詞だよ。」

その言葉も終わらないうちに、シュウはハルカを白いベッドに押し倒した。

ハルカが驚きで目を丸くしているのにも構わず、シュウは乱暴に唇を奪う。

「んっ……は……。」

シュウの舌はハルカの唇を割って入り、口内を掻き回す。

酸素すらも奪いつくすような口付けに、ハルカは翻弄されるしかなかった。

ようやくシュウが唇を放す。

二人の間に銀糸が伝った。

「な、何するのよ、シュウ……!」

何とか呼吸を整えようとしながらハルカが叫ぶ。

そんなハルカをシュウは冷たい目で見下ろしていた。

「ハルカ、さっき他の男に抱き締められていたね。」

「そ、それは……不可抗力かも。」

「どこが不可抗力なんだ。」

シュウは目の色と同じ冷たい声で突き放す。

「君は突き飛ばすなり何なりできたはずだろう?どうしてそうしなかった?」

「そ、それは……。」

ハルカは言葉につまる。

――ハルカが何もしなかったのはその男子生徒に哀れみを覚えたからだ。

好きになってもらえないものを好きになってしまった、そういう人間に向けるある種の同情。

その哀れみこそ、件の男子生徒はハルカの眼中には全くないという何よりの証拠である。

しかし、あらゆる意味で幼い彼女は、抵抗しないという自分の残酷な仕打ちに気づかなかった。

何も言わないハルカにシュウは言葉を続ける。

「君はぼくの物だと言ってあるだろう?それを他の男に抱き締められても大人しくしているなんて……。」

シュウはハルカのブラウスに手を掛けた。

「しかも忘れられないだって?ぼく以外の男を?……君はぼくのこと以外何も考えなくていいんだ。」

ブラウスをはだけて、シュウは首筋を強く吸い上げる。

「あっ……!」

「君に忘れさせてあげるよ。君の体にぼくを刻んであげる。」

「や、やだっ!」

シュウの瞳の中にある冷たい光にハルカは戦慄する。

シュウを思い切り突き飛ばしてベッドから降りようとした。

しかし、シュウの手に腰を引き戻され、ハルカはベッドの上にうつ伏せに倒れる。

それでも何とかシュウから離れようとするハルカに、シュウは狩人が獲物を追い詰めるときと同じ表情を浮かべる。

愉悦という名の獲物を弄ぶ笑みだった。

「だったら抵抗してみれば?」

無駄な抵抗をね――。

シュウはハルカの下着を剥ぎ取った。





前戯も何もしていないハルカの蕾は固く乾いていた。

それでもお構いなしに、シュウは既に熱くたぎった彼自身を押し付ける。

「なっ!シュウ、やめて!」

「嫌だね。」

シュウは思い切りハルカを貫いた。

絹を裂くような悲鳴が部屋に響き渡る。

「あっ……うっ……ああっ!」

ハルカは貫かれた痛みに涙を零す。

「ハルカ、まだ少ししか入っていないよ。」

シュウは逃れようとしているハルカの背を押さえつけた。

「やっ……!」

ハルカはシーツを掴んで、自らの体を蹂躙される痛みに耐えていた。

そんなハルカを見て、シュウは薄く笑う。

そして、ハルカの中に自身を無理やり押し進めていった。





「……っ……つうっ!」

ハルカはシーツに顔を押し付け、声を上げるのを堪えていた。

既にシーツにはハルカの涙の染みがいくつも出来ている。

シュウはそんなハルカの様子を気に掛けることもなく、ハルカの中に押し入ろうとしていた。

ハルカの蕾はシュウを拒絶し、なかなか彼自身はハルカの中に進めない。

それでも、ハルカには、彼が動く度に、自分の体が彼に反応して蜜を出すのが分かった。

彼自身が内壁のひときわ敏感な部分を擦る。

「……あっ!」

思わず声が漏れてしまった。

「へえ、感じてるんだ。」

シュウの笑みを含んだ声がする。

シュウはハルカが反応したところだけを何度も突いた。

ハルカはもう声を抑えることができない。

涙を流しながらシーツを握り締め、ただ彼が自分を絶頂に放り上げるのを待つしかなかった。





シュウは荒く息をしているハルカを見やる。

達してしまい、意識が朦朧としているハルカをもう一突きした。

「あっ!」

「ハルカ、まだ半分も入っていないよ。君にはまだまだぼくを感じてもらわないと。」

ハルカは肩越しに振り返ってシュウを睨み付ける。

「どうして、こんなことするのよ……!」

「言っただろう?君が他の男のことなんて忘れてしまえるよう、ぼくを刻み込むって。」

シュウはこともなげに答える。

「そんなことして――。」

「何になるかって?」

シュウは冷酷な笑みを浮かべた。

「ぼくは満足だよ。君がぼくだけのことしか考えなくなるなんて、思っただけで楽しいじゃないか。」

その言葉を最後に、シュウはまたハルカの中に進み始める。

彼女の脚の間には、今や満々と蜜をたたえた泉があった。





彼自身がようやく根元まで入った時、ハルカはもう既に数回意識を飛ばしていた。

その度に、シュウが無理やりハルカを覚醒させる。

数回目の気絶のあと、やはりハルカは泣きながらシュウを肩越しに睨み付けた。

「ゾクゾクするね、その目……。」

シュウはハルカの顔を見やる。

「ぼくのやってることが許せないって目だ。ぼくだけしか見ていない。」

シュウは彼自身をハルカの中に挿れたまま、彼女を反転させる。

「ああっ!」

「さあ、ハルカ。ぼくの目を見て、ぼくの声を聞いて、ぼくだけを感じて。」

シュウはハルカを抱き起こす。

少しの刺激にもハルカは敏感に反応を返した。

「可愛いね、ハルカ……。今度はぼくと一緒にイこう。」

シュウは膝の上に乗せたハルカを突き上げた。





ハルカはシュウの動きに翻弄されるまま、淫らに腰を振っていた。

……どうしてわたしはこんなことをしているんだろう。

どこか遠くで自分を眺めているような気がする。

だが、それも彼の動きのせいで、意識は彼に繋ぎとめられる。

「あっ!」

「ぼくのことだけを考えなよ、ハルカ。」

シュウは笑みを浮かべている。

「さ、君もぼくもそろそろだね。ハルカ、イこうか。」

シュウはハルカの腰に回した手に力を込める。

ハルカはシュウの肩を掴んで、これからくるであろう絶頂の快楽に恐怖した。





ハルカが目を開いた時、最初に目に飛び込んできたのはシュウの顔だった。

「……シュウ?」

名前を呼んだ次の瞬間には、先程までの記憶が押し寄せてくる。

「な、何てことするのよ!」

叫んで起き上がろうとしたが、腰が立たない。

「無理しない方がいいよ、ハルカ。」

シュウがハルカの髪を撫でる。

「無理させたのはシュウの方でしょう……?」

その言葉にシュウは満足げに笑う。

「そうだよ。少なくとも、君は目を覚まして初めにぼくを見て、ぼくの名前を呼んでくれた。」

シュウの手が髪から頬へとすべる。

「そして、ぼくにされた事を思い出してくれた。」

目を細めてシュウは言う。

「他の男のことなんて、欠片も思い出さなかっただろう?」

確かに、ハルカはシュウに翻弄されていて、他のことを考える余裕なんて無かった。

「うう……、でも、わたしばっかり悔しいかも……。」

「そんなことないよ。ぼくはいつでも君のことを考えている。」

シュウはハルカの髪を一房手に取って口付けた。

「悔しいのはぼくの方。君が他の男なんかに構うから。」

獲物を捕らえた狩人の目が光る。

「君はぼくだけの物だよ。」





シュウの瞳にともった光は、それを見つめるハルカの心を確かに絡め取っていた。

 

 

 

 

 

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